ライフゲインの齎すテンポアドバンテージ
ライフゲインの齎すテンポアドバンテージ
ライフゲインの齎すテンポアドバンテージ
スタンダードでのプレイを観戦中での一幕。
此方側で見ていた方の手札は、
《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》
《山/Mountain》
《乱撃斬/Wild Slash》
《乱撃斬/Wild Slash》
《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
《かき立てる炎/Stoke the Flames》
《雷破の執政/Thunderbreak Regent》
と言うハンドのマルドゥミッドレンジらしきもの。
相手の
《開拓地の野営地/Frontier Bivouac》
スタートに
《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》
でターンを返したところだった。

続く、向こう側のターン
《森/Forest》
がセットされ場に展開されたのは、
2体の《エルフの神秘家/Elvish Mystic》だった。
ここで、気になり相手側の手札を確認すると4枚。
どうやらマリガン無しでのキープらしい。
ターンが返ってきて、マルドゥ側のトップは《はじける破滅/Crackling Doom》。
黒をタッチしている理由の1枚だろう。
これで、除去4枚の後手ハンドとしては申し分無い内容。
相手のマナエルフに当てる為の火力もちょうど2枚揃っている。
が、ここでマルドゥ側のプレイヤーの取った行動は
《山/Mountain》を置き、《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》をプレイだった。

そして先手、3ターン目。
2体のマナエルフが残った、ティムール側は
《山/Mountain》を置き5マナオープンの状態からプレイされたのは《雷破の執政/Thunderbreak Regent》。
《エルフの神秘家/Elvish Mystic》を立たせ、ターンを返した。
この返しのドローは《静寂の神殿/Temple of Silence》。
手札の《乱撃斬/Wild Slash》2枚を《エルフの神秘家/Elvish Mystic》に打ち込む。
《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》の能力によりライフは24点。
そして、《静寂の神殿/Temple of Silence》の戦術で捲れたのは《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》。
これをトップに置き、ターンを返した。

第4ターン。
《ヤヴィマヤの沿岸/Yavimaya Coast》から2枚目の《雷破の執政/Thunderbreak Regent》が登場。残り手札は2枚。
4点をテイクして20点となった。
マルドゥ側の手札は4枚。
《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》
《かき立てる炎/Stoke the Flames》
《雷破の執政/Thunderbreak Regent》
《はじける破滅/Crackling Doom》
トップは《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》。

残念ながらここで席を外さなければならなくなり、続きは解らない。
返しのマルドゥ側のアクションは
《遊牧民の前哨地/Nomad Outpost》をプレイ。
そこからの選択肢は、《はじける破滅/Crackling Doom》と《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》。
《雷破の執政/Thunderbreak Regent》2枚とのレースは厳しい事を考えると《はじける破滅/Crackling Doom》と動くのが自然だろう。
この場合、次のターンは見えている限りで、4点テイクで16点。
この《雷破の執政/Thunderbreak Regent》は、《かき立てる炎/Stoke the Flames》で除去が見えており、《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》の能力の絆魂により1点のゲインまで付いてくる。
また、相手側の妨害を考慮しない場合は、《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》をプレイし出てきたトークンと本体、そして《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》を寝かせて打つ事も出来る。
恐らく、後手側がだいぶいい状況だと思われる。


面白いのは2ターン目の後手のアクションだろう。
通常、マナクリーチャーは焼く、のが鉄則だ。
また、相手の初動を飛んでの2体展開は、緑マナ源がタップインしか無く、2ターン目のドローで森を引いたと捉えるのが自然だ。
そして、相手は7枚の手札をキープしている。
これらが正しいと仮定した場合、相手の土地は他もタップインまたは、《山/Mountain》。
それらだけで手札が溢れる事は考え辛く、キープに足るという事からして、土地が少なめの濃いハンドが予想できる。

だが、ここでの選択は2体の《エルフの神秘家/Elvish Mystic》を焼き払うでも無く、タップインを処理しながら1体を焼き、次のターンに《はじける破滅/Crackling Doom》を視野に入れるでも無く、《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》の能力の最大化を獲りに行く選択とした訳だ。
このメリットは明確に、上の試合で出ている。
《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》というカードを手に入れた事もあり、先後の攻守の入れ替えを《かき立てる炎/Stoke the Flames》と合わせスムーズに行える流れが見える。
また、火力だけで手札に8点相当見えており、全てを消化すると《雷破の執政/Thunderbreak Regent》の攻撃2回分に相当する。これにより、タップインの間にテイクする事を許容できる回数を増やしている形となっている。
この様なカードの能力の最大化は基本的に先手番の特権であり、後手番に於いては往々にして時間が足りず、テンポ的に咎められる事が多い。
その意味ではライフゲインの強みを解り易く表しているとも、より直接的に《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》の強さを表しているとも言えるだろう。
ここから解るように、ライフゲインカードによるアドバンテージとはカードアドバンテージでは無く、テンポアドバンテージに分類されると捉える事が出来るだろう。
一旦、2マナを先に使う必要があるものの、それと同等以上のテンポを創り出す事により、マナ差を埋め得る働きとなっている。
上記の例では、《乱撃斬/Wild Slash》2発のRRで4点分。《雷破の執政/Thunderbreak Regent》の攻撃1回分に相当し、それが出てくるターンを1ターン遅らせたと言い換える事が出来る。待機1、或はフェイズアウトとも考えられ、《時計回し/Clockspinning》、《サファイアの魔除け/Sapphire Charm》に近く、1ターンの遅れも土地1枚の伸び方のと考えられ、都合Uもしくは無色1マナとも言えるだろう。
要するに、ライフゲインによって齎されたターン数毎に1マナ分の得に近い。

但し、この例はオープンの5マナから出てくるものが、全て程度は違えどライフアドバンテージを齎すものであった場合にのみ成り立つ。
例えば、この5マナからの展開が《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon》であったとしても、《かき立てる炎/Stoke the Flames》が間に合う展開となっている。
しかし、この5マナで《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》を置かれては投了ものだ。また、ティムールであった事から《揺るぎないサルカン/Sarkhan Unbroken》も考えられる。此方は、-2の返しに《乱撃斬/Wild Slash》を当てれば最低限の損失で済むものの上記の展開と違い《エルフの神秘家/Elvish Mystic》1枚分マナもカードも良い状況でターンを渡す事になってしまう。


この様に上記の試合は、3ターン目の5マナのオープンの状況の行動に依存されるプレイであり、相手側のデッキの内容をある程度は把握していた場合、またはそこで賭けに出なければならない程の手札であると判断した場合のみの選択とした方が無難ではあるだろう。
実際に《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》を意識しないなら、2体の《エルフの神秘家/Elvish Mystic》を焼き、3ターン目に《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》、4ターン目に《かき立てる炎/Stoke the Flames》か《はじける破滅/Crackling Doom》の何れかを打ち込むのが綺麗な流れに見える。

ただ、この試合に於いて2ターン目に《エルフの神秘家/Elvish Mystic》を放置して、8点分のゲインを見て試合になると判断できるのはライフゲインの重要度をマナ差に換算、或は比較して正しく理解できているかが問われる局面だったように思う。
自分ならば、このマナエルフ2体を放置して試合にする、出来るとは微塵も思っていなかったが、後でこの様に考え直してみて、初めてリスクはあるが試合として成り立つどころか、勝ちが見えると気付かされた。

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